きょう紹介する記事は、私にとっては、かなり衝撃的であった。
多くの方にとっても、実は知らないことではないだろうか、
「超高層からの全館避難は想定されていない」
ということを。
3月25日に発生した能登半島地震で、震源から約330キロ離れた東京でも、長周期地震波が4分以上観測されていたことが分かった。地震波などのデータは東京大学地震研究所のホームページで閲覧できる。
能登半島地震で東京の超高層ビルが大きく揺れることはなかったが、もし激しい長周期地震波に襲われるとどんな事態になるのか。
「超高層からの全館避難」は想定外でいいのか
2006年11月に日本建築学会と土木学会が発表した、「海溝型巨大地震による長周期地震波に備えるべき」とする49項目からなる共同提言をもとにイメージしてみよう。その多くは建築・土木構造物の耐震性向上をアピールしたものだが、注目したいのは「避難計画」に関する3項目の提言が入っていたことだ。
(提言1)高層建物からの「全館避難」を可能にする
(提言2)「スーパー耐震エレベータ」を開発する
(提言3)「ライフライン系」など設備機器の耐震性を向上させる
今回は提言1について書きたい。とても意外なことだが、日本の超高層ビルは「全館避難」を想定しないつくりになっている。それでは、火災にはどう対処するのか‥‥。適切な防火区画と防災設備などにより、火災を限定されたエリアに閉じこめるので、「階避難」すれば安全が確保されると考える。
階避難とは、火災階およびその上下の複数階にいた人が、避難階段などへ逃げ込むことをいう。実際に火災が発生した場合には、火災階より上階にいる人はすべて地上へ誘導されることが多い。しかし、設計の原則としては階避難であり、全館避難にはなっていない。
建築学会が懸念した「想定外の事態」とは、海溝型巨大地震による長周期地震波だ。その正体が分かってきたのはつい最近、2003年の十勝沖地震のときだった。長周期地震波により超高層ビルが「激しくしつこく」揺れて、次のような事態になったとしたら、全館避難が必要になるのではないかと考えたのだ。
(1)超高層が「既存不適格」で、倒壊する危険性が高いとき
(2)室内の散乱が激しく、余震で死傷者が出そうなとき
(3)高層階が激しく揺れて、パニックに陥ったとき
(4)建物内の複数個所で、火災が発生したとき
(5)防災設備が故障して、火災が延焼したとき
(6)建物内外で危険物やガスが漏出したとき
(7)都市火災が発生し、周辺が危険になったとき
このうち「(3)高層階が激しく揺れて、パニックに陥ったとき」にシリアスなシミュレーション結果がでている。
31階建ての超高層マンションが、想定「東海東南海地震・名古屋三の丸EW波」(加速度約200ガル)に襲われたとき、住戸内がどうなるかを調べたものだ。
その調査結果に居住者が感じる恐怖度というものがある。
そしてその数値の高さに驚かされる。
これは、「平気、少し怖い、かなり怖い、非常に怖い、絶望的」の5段階なのだが、「絶望的」は11階で既に82%に達している。
居住者が絶望的に感じる割合
11階:82%
21階:92%
31階:96%
パニックに陥ったら、避難階ではなく、建物から脱出したいのが人情だろう。
そして、もうひとつ気になる点。
この中で最も大変なのが避難経路の確保だ。平たく言えば、各部屋から避難階段まで通じる廊下の距離を短くし、避難階段の数を増やしたり幅を広げたりすること。せめて、欧米先進国のレベルに追いつかなければならない。そして、障害者、高齢者、幼児が利用できるエレベータも備えたい。
日本は地震大国である。
建物の耐震技術等でトップレベルと考えている。
その中では、当然、最悪の場合の避難についても細心の注意がはらわれていると思い込んでいた。
少なくとも欧米先進国のレベルにあると思い込んでいた。
実は、コストとの関係で、避難経路の確保については、十分でないことがわかった。
東京では、再開発により、超高層ビルが今後も建設されるだろう。
そこは、観光地にもなり、地方からも多くの人が訪れる。
避難訓練などしたことの無い人たちもだ。
ホテルに泊まったら、「非常階段の位置を確認する」これだけでは、不十分であることがわかった。
避難階がどこかまで確認しておく必要がある。
建築基準法を変えたからといってスグに高層ビルが建て替えられるわけではない、今回の「想定外」を意識した避難誘導、防災訓練が必要である。
そして、まずは、このような状況にあることを我々が知っていることが重要だ。